修道院を世界で最初に開いたのは、聖アントニオスです。
彼はキリスト教が、ローマ帝国に公認として認められた頃、エジプトで生まれ、キリスト教徒として敬虔な両親に教育をうけてきましたが、20歳の時に両親と死別。
その財産を貧しいものに与え、自らは砂漠に籠り、断食生活に身を投じました。
彼の生きざまや説教に心打たれた修道士たちとともに開いたのが修道院の始まりです。
彼は105歳という長寿を全うしました。
そしてエジプトの砂漠に修道院を建設し、そこで3つのものを求めました。
1・祈り
2・断食
3・孤独
彼らの衣服は質素で眠る時間は短く、日のあるうちは断食し、夕食は極めて質素でした。
そして欲望を制御し、完全な無所有、真の謙遜、からだの浄化を求めました。
彼らの修道院生活は、この世の中からの逃避ではありませんでした。
まったくその逆で断食と祈りで自分の欲望とだけ戦ったのです。
自分の内面こそ真の戦いでした。
断食は昔から生命の基本をなす重要なことであることを修道士たちは発見していたのです。
考えてみれば、自然界を見てください。
渡り鳥も何も食べずに遠くまで飛びます。
サケも産卵するところへ行くまで一切、食べません。
南極のペンギンも卵が孵化するまで厳寒の中でも断食しています。
修道院の断食もこのような自然界とは違いますが、修道士たちの断食から新たなクリエィテブなものはどんどん生まれてきたのも事実です。
たとえば修道士メンデル(メンデルの法則と呼ばれる遺伝に関する法則を発見したことで有名。遺伝学の祖)もそうですが、科学の始まりは断食を続けていた修道院からだということを知らなければなりません。
ただ断食も11世紀になりますといいかげんなことになってしまいました。
つまり断食間に食べたい修道士や信徒たちが抜け道を作り、断食期間中はどんな飲み物もOKなのを利用して、ビールが開発され、断食期間中に修道士たちも飲みまくったといいます。
ビールは水と穀物とイースト菌でできていますので満腹状態になります。
ドイツでは修道院の名がつくビールが多いのはそのためです。
またスペンインからアフリカに派遣された修道士から、原住民の粗末な飲み物をチョコレート液(チョコレートの始まりは液体でした)で、断食期間中を過ごしたそうです。
こうしてビールもチョコレートも断食を忌避したい欲望から生まれた産物だったのです。
中世のカトリックはこうして食べ物から腐敗していき、ついに腐りきったローマ・カトリックに抗議した修道士ルターによる宗教改革が起こります。