酢を英語でビネガーといいますが、
フランス語のぶどう酒vinと酸味aigreをあわせたビネーグルvinaigreからきているようです。
お酢はお酒のアルコールが酢酸菌の働きで酢酸に変わることによってできる発酵調味料です。
いつごろから調味料として使われだしたのか確かなところはわかりませんが、
最も古い記録では、紀元前5,000年、中東で酢が造られていました。
民 6:3 ぶどう酒も濃い酒も断ち、ぶどう酒の酢も濃い酒の酢も飲まず、ぶどう液は一切飲んではならない。またぶどうの実は、生であれ、干したものであれ食べてはならない。
とあり、デーツ(ナツメヤシ)の酒や干ブドウの酒、ビールなどからお酢をつくっていたようです。
さらにルツ記では
ルツ 2:14 食事のとき、ボアズはルツに声をかけた。「こちらに来て、パンを少し食べなさい、一切れずつ酢に浸して。」ルツが刈り入れをする農夫たちのそばに腰を下ろすと、ボアズは炒り麦をつかんで与えた。ルツは食べ、飽き足りて残すほどであった。
とありますので、記録に残っている酢の歴史は、4000年前からだということになります。
ギリシャの歴史家ヘロドトス、哲学者アリストテレスなどがお酢のことを書いており、
医者のヒポクラテスは回復期の病人への酢卵の効用を述べています。
大半はぶどう酒を酢酸発酵させて酢をつくったとみられ、
あんばい(塩梅)という言葉は、塩と梅(酢)の二つが味つけの基礎をなすという意味です。
世界各国の酢はその地でできる酒と関係のある原料からつくられるものが多く、
日本では米酢のほか、酒粕(かす)からつくる粕酢があります。
フランスではりんご酢がりんご酒、ぶどう酢がぶどう酒、
ドイツでは麦芽酢がビールという具合です。
最近は、安い合成酢は、化学的につくられた酢酸を水で薄めて
アミノ酸や糖類を加えたもの、あるいは醸造酢に酢酸を加えたものなので、
本物の酢(天然醸造酢)を利用しましょう。
食酢は殺菌力が強く、原液ではほとんどの病原菌は約30分以内に死滅します。
そのため、酢に浸した食品は保存がきく生ずし、酢漬けなどの加工例や、
魚を酢洗いするなど衛生的な利用例は多いです。
また酸味は食欲を増進し、消化液の分泌を高めるなど、
健康上プラスになる作用をもたらします。
とくにストレス緩和に大きな力があり、精神的に疲労が大きいとき、
酢を使った食品や料理をとることで、落ち着くことが多いのです。
胃酸の分泌が減少しているようなとき、
胃中のペプシンの活性化が得られにくいのですが、酢により、
ペプシンの活性化が補助できます。
また酢の殺菌力により、胃内に入った食物の殺菌を助け、腸内へ雑菌が行くことを防ぎ、
腸内有用細菌の増殖に対しての悪影響を避けることができます。
酸がタンパク質を凝固させる性質があるため、
落とし卵をつくるときに酢を塩とともに湯の中に加えたり、
魚を酢じめにする場合もあります。
また酢は食塩の強い味を和らげる作用があるので、
塩焼きの魚に添え酢をつけたり、隠し味としてよく使われます。
そのほか野菜類の褐変をおこす酵素を止める働きを利用して、
ゴボウ、蓮根(れんこん)などを調理する際、
酢水につけるとともに酢煮が使用されます。
また植物の天然の色であるアントシアン系の色素に作用すると
きれいな赤色を発色するため、ショウガなどを酢に浸して紅色に発色させるなど、
料理のうえでの酢の応用範囲は広いのです。