日本は世界では稀にみる食の戒律が存在しない国です。
仏教はその戒律があり、少なくとも江戸時代まで
動物の殺生を禁じる戒律が生きていましたので肉を食べる習慣はありませんでした。
またキリスト教も戒律があります。
ただキリスト教が、ローマ帝国公認宗教になり、帝国の各地にキリスト教が
拡大されていき、その地域の習慣を吸収し、取り入れていきました。
ゲルマン民族は特に肉を食べないと寒さに耐えれない北国なので、
肉を食する習慣から、本来、肉を食べない初代キリスト教が、大きく変身していきます。
そしてヨーロッパ全土がキリスト教国となった中世には、
肉はクリスチャンの常食となっていきました。
そのためクリスチャンは肉を食べる人たちという誤解が生じてしまいました。
中世カトリックでは、その代わりに受難週に徹底した
40日ファスティングが実行されました。
おそらく肉に傾斜してしまった罪ほろぼしかもしれません。
ところがキリスト教国と化したヨーロッパがルターの宗教改革以後、
ルネッサンスなどの文化の開花とともに脱宗教のゆえに
ファスティングの習慣が少なくなり、肉食だけが残ってしまいました。
そしてヨーロッパでは、肉食に傾斜せず、
ファスティングを守り通したのが、
極めて少数の民族であったユダヤ人(民族)でした。
そのユダヤ民族こそ4000年の食の戒律を確立し、ファスティングを基礎とした信仰が
シナゴークを中心に強力なコミュニティーを形成していたのです。
その戒律はすべて旧約聖書に書かれています。
・肥えた牛を食べて憎み合うよりは、青菜の食事で愛し合う方がよい(箴15:17)
・あなたが食欲おうせいな人間なら、自分の喉にナイフを突きつけたも同じだ(箴23:2)
・蜂蜜を食べ過ぎればうまさは失われる。名誉を追い求めれば名誉は失われる(箴25:27)
・その一生の間、食べることさえ闇の中。悩み、患い、怒りは尽きない(コヘ5:16)
・人の労苦はすべて口のためだが、それでも食欲は満たされない(コヘ6:7)
(注)ソロモン王は、紀元前1011年頃 - 紀元前931年頃・古代イスラエルの第3代の王。
父はダビデ)。
ソロモン王は、世界最高峰の知恵者で、権力も財産は限りなくあり、
イスラエルで黄金時代を築きました。
何と妻700人、側室300人もいた超大富豪でしたが、
コヘレトの言葉にこのような言葉を残しています。
「コヘレトは言う。なんという空しさ、なんという空しさ、すべては空しい。」
世界一の知恵者で、紹介したような食の知恵を残してくれましたが、
心は満たされなかったのです。
ほんとうのファスティングは心も満たすものなのです。