まず環境負荷が増加している最大の問題は、家畜が食べる飼料にあります。
牛や羊などは、本来草を食べる草食動物ですが、食肉用に飼育される動物には、
早く成長させ、脂肪の乗ったおいしい肉や大量の乳を作り出すため、
トウモロコシや大豆など栄養価の高い穀物が餌として大量に与えられています。
草はよほど水不足や土壌が悪くない限り自然に生えてきますが、
穀物は野菜と同様に人が手をかけて栽培しなければ十分な量を収穫することはできません。
つまり、動物の餌を作るだけのために、野菜を栽培するのと同様の負荷がかかっているのです。
さらに、動物の餌となる穀物には、
野菜を栽培するときよりも多くの農薬や化学肥料が使われます。
人が食べる野菜に大量の農薬や肥料を使えば人体に直接影響が及びますが、
動物の飼料用穀物は間接的影響に留まるため、食用野菜と比べて規制が緩いのです。
全米の農地の約半分となる1億4,900万エーカーが使用され、
7,600万kgの農薬と77億kgの窒素肥料、大量の水が消費されています。
窒素肥料は、土壌に吸収されると二酸化炭素の300倍も環境負荷の高い一酸化二窒素を生成します。
飼料を栽培するために農業用のトラクターや機械を使用することでも、
温室効果ガスが排出されます。
また、世界中に飢餓に苦しむ人々が大勢いる中、
動物の餌となる穀物を大量に栽培することの是非を問う声も上がっています。
他にも家畜の排せつ物問題があります。
家畜の排泄物は本来、土壌に生息する微生物や虫などにより分解され、
草や植物が育つための栄養素となる循環のはずですが、多くの食肉動物の飼育場では、
効率を求めて狭い敷地内に大量の動物が押し込められているため、
自然に分解・循環することが不可能なほど大量の排泄物が出ています。
そこで、人工的に微生物などを投入して分解させますが、
排泄物が分解されるとアンモニアや硫化水素などのガスが発生するため、
悪臭のみならず、大気が汚染され、地域住民に健康被害を及ぼします。
排泄物と共に流れ出る病原菌や有害物質により、
土壌や地下水・河川が汚染される被害もあります。
また、牧畜業では、成長促進剤として抗生物質やホルモンを大量に投与されていますが、
家畜の排泄物に含まれるこれら物質が、土壌や水性環境を汚染し、
最終的に地域住民の健康にも被害を及ぼします。
さらに家畜への抗生物質の乱用により、抗生物質に耐性のある病原菌が出現し、
動物や人に感染するなど深刻な被害も起こっています。