高度経済成長期真っただ中の1962年度の日本人1人当たりコメの消費量は118.3キロでした。
その後は、坂道を転げ落ちるように減少し、2016年度でその半分以下の54.4キロとなっています。
1962年度はご飯を1日に5.4杯(1杯精米で60グラム換算)食べていたのですが、
2016年度は2.5杯しか食べなくなった計算となります。
各地の農業試験場では品種改良を重ね、食味や食感にこだわった
新ブランドのおコメが続々デビューしていますが、
消費者のコメ離れには歯止めがかからない状態なのです。
コメを食べなくなった一方で、油脂類や肉類、牛乳・乳製品の消費はどんどん増加しています。
コメと同じように1962年度と2016年度を比べると、油脂類が5.3キロから14.2キロと2.7倍、
肉類は7.6キロから31.6キロと4.2倍、牛乳・乳製品が28.4キロから91.3キロと3.2倍となっているのです。
コメ離れの原因はこうした食生活の西欧化に加えて、高齢化で食が細くなる人が増えていることや、
人口減などさまざまな要因が組み合わさっています。
近年では、「太らないためには、炭水化物は取らない方が良い」といった
糖質オフダイエットブームも起こっています。
農林水産省が14年度にまとめた「主食用米消費動向の中期的変化及びその要因分析調査」では、
夕食にご飯類以外を選ぶ理由として
「いろいろな種類の主食を食べたいから」が約半数を占めています。
一方、時間に追われる朝は、
特に「短時間で食べられる」「準備や片付けに時間がかからない」などの理由で
ご飯以外の主食を選ぶ傾向です。
総務省の「家計調査」(2人以上世帯)によりますと、
2011年に一般家庭の食料品への支出額で、初めてパンがコメを上回ったのです。
2012年はわずかにコメが再逆転したものの、
2013年以降、パンへの支出が上回る状態が続いています。
和食は13年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録され、
海外では「健康的な食事」として人気が高まっています。
米を中心とした世界に誇る日本食です。
農林水産省が、ユネスコ無形文化遺産に登録申請した際に定めた「和食」の定義には、
下の4項目が上げられています。
①多彩で新鮮な食材とその持ち味の尊重
②栄養バランスに優れた健康的な食生活
③自然の美しさや季節の移ろいの表現
④正月などの年中行事との密接なかかわり
果たして豊かな日本食の回復は可能なのでしょうか。