私たち人間が物を噛む時は、最大で体重の2~3倍の強い力で噛み砕きますが、
現代の食べ物は軟らかい物が多く、口の中に入れるとお粥状態になって、すぐ飲み込めてしまい、
噛むという行為自体が無くなってしまいました。
噛むということは、食べ物を小さくして、胃の消化を助けるという効果だけではなく、
噛んだという物理的な刺激が歯全体にも加えられ、
歯を支えている歯根膜繊維(コラーゲン繊維)からあごの骨に伝達され、
顔の筋肉を介して頭全体の骨に伝達され、骨の甲にある細胞を圧迫したり、けん引しますので、
細胞が非常に元気になり、栄養やカルシウムを摂取して、丈夫な密度の高い骨を作ります。
さらに「噛む」という情報は脳にも入力され「これは一体何だろうか」、
「どれくらい噛んだら良いか」を、歯ざわりや硬さなどからすぐに判断します。
そして、「これは間違いなくお刺身だ」、「食べても良い」、「コリコリしていて美味しい」というように
脳全体が活力を持って動き出すのです。
さらに「この食べ物はお袋が作ってくれた物である」とか、
あるいは「友達と楽しく食べた」とか、「食べ損なった」とか、喜怒哀楽などの情報も「噛む」という行為の中には入っています。
食べ物を胃に入れるための準備過程ではなく、
脳の中枢を介した全身の変化や活力を引き出すための重要な行為だと専門家の方は
指摘されておられます。
口に入れたら最低、1口30回、しっかり噛むことを目標回数示しておられますが、
現代は、噛まなくていいものばかりが出回っていますので、
大きな健康問題が起きるのです。
ある歯学部の実験で弥生時代の食べ物とファーストフードの食べ物の噛む回数の比較をしたら、
弥生時代の食べ物は、噛む回数は平均3990回、食事時間51分。
ファーストフードでは、噛む回数は平均620回、食事時間は11分ということで、
2000年の差はありますが、昔の食物と現代では噛む回数が1/6~1/7に減ったという証明です。
食べる行為は、食べ物がいったん口に入れば、
すべて “毒”あるいは“有害物質”として判断しますので、
よく噛んで、からだが過剰反応をしないようにし、
さらに胃に負担をかけないようにし、消化率を助けてあげます。
そして噛めば噛むほど唾液というものが出てきますので、
唾液と食べ物が良く混ざると、
食べ物の本来持つ刺激性を抑えて、オブラートに包むような形でやさしく胃に対応してくれます。
この唾液は、免疫力を高めます。
さらに噛むことは高齢者の健康にも大きな役割を果たします。
まずは、噛みごたえのある食べ物、とくに発酵薬膳のじっくりと堪能して、
唾液を目いっぱいつくり、さらにファスティングをすれば
一層、若々しい健康を手に入れるようになることを保障します。