「認知症」は病名ではなく、認識したり、記憶したり、判断したりする力が障害を受け、
社会生活に支障をきたす状態のこと。
この状態を引き起こす原因にはさまざまなものがありますが、
「アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)」もそのひとつ。
現在日本では認知症を引き起こす原因のうち、もっとも割合の多い疾患で、
6割以上がアルツハイマー病だと言われています。
前頭側頭型認知症などがあります。
アルツハイマー病では、脳の神経細胞が減少する、脳の中で記憶を司る
「海馬」を中心に脳全体が萎縮する、脳に「老人斑」というシミが広がる、
脳の神経細胞に糸くず状の「神経原線維変化」
が見つかるといった変化が現れることがわかっています。
脳の中にβアミロイドと呼ばれるタンパク質がたまり出すことが
原因の一つとされていて、βアミロイドが脳全体に蓄積することで健全な
神経細胞を変化・脱落させて、脳の働きを低下させ、
脳萎縮を進行させると言われています。
アルツハイマー病を発症すると、記憶障害の症状が見られ、
進行にともなって場所や時間、人物などの認識ができなくなる
「見当識障害」の症状が現れます。身体的機能も低下して動きが不自由になったりします。
進行の度合いには個人差があり、
わずか数年で寝たきりになってしまう人もいますが、
10年経っても自立して穏やかに暮らしている人もいます。
アルツハイマー病の根本治療はまだ出てきていませんが、抗認知症薬で病気の進行を遅らせることができます。
アルツハイマー病の原因はまだ完全には解明されていませんが、長い期間をかけて脳の中で生じる、複雑な一連の事象によって発症することが次第に明らかになってきました。原因としては、遺伝、環境および生活習慣などの複数の因子が絡み合っていると考えられます。遺伝子構成や生活習慣は人によって様々なため、それぞれの因子が、アルツハイマー病の発症の危険性を上昇させたり低下させたりする上でどの程度重要な役割を果たすかは、人によって異なります。
アルツハイマー病をめぐる大きな謎の一つは、なぜこの病気は主として高齢者に発症するのかという点です。この疑問は、脳が通常、加齢とともにどのように変化するかということに関する研究によって、解明されつつあります。たとえば、加齢に伴う脳の変化がどのようにニューロンに害を及ぼし、アルツハイマー病による障害の原因となるかということについて、研究が行われています。