国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第15回出生動向調査(2015年)」によれば、
妻の年齢が50歳未満で、結婚後15~19年の夫婦のうち、
過去に不妊の心配をしたことがある割合は29.3%と全体の3割近くにのぼり、増加傾向にあります。
その半分以上にあたる約15.6%の夫婦が治療を受けていることから、
「夫婦の6組に1組が不妊に悩んでいる」と言われることがあります。
「不妊」増加の背景として、
ライフスタイルの変化や女性の社会進出等にともなう晩婚化があげられます。
医療技術が進歩し、寿命が長くなった今日においても、出産に適した年齢は
昔と変わっておらず、加齢によって子どもを授かりにくくなると言われています。
しかし、最近では高齢であったり、
疾病を抱えていても「不妊治療」を受けることで子どもを授かる可能性が出てきました。
国でも不妊治療のうち、保険適用外の費用が高い体外受精に対して
補助を行う制度ができるなど、治療を後押しする動きがあります。
さて、「不妊症」とは、どう定義されているのでしょう?
特に病気をもたない男女が一定期間、
避妊をせずにセックスをしても妊娠しない場合を、一般に「不妊症」と呼びます。
そして、この「一定期間」について日本産婦人科学会は「1年」としています。
気をつけたいのは、先の調査がこのような基準を踏まえたものではない点です。
次に日本以外の国における不妊の数も見てみましょう。
過去の世界規模の調査をまとめた2007年の報告書によれば、
時代や国によってバラツキはあるものの、不妊症の比率の平均は約9%。
日本の16%という数字はかなり高いのです。
原因として考えられるのはやはり晩婚化の傾向。
2015年の調査では女性の平均初婚年齢は29.4歳。
日本は世界で32番目に初婚年齢が高い国なのです。
女性の社会進出が進む、イギリスやドイツの初婚年齢は30歳を超えています。
もっとも妊娠しやすい時期が20歳前後なので、
晩婚化して子どもを産む時期が遅れれば必然的に不妊症の比率は高くなると考えられます。
「出生動向基本調査」によると、意外なことに20歳〜29歳で「現在不妊治療中」と
回答した割合は他の年代よりも高いのです。
またこの年代は「現在(不妊を)心配している」と答えた割合ももっとも高い。
初婚年齢に近づき、初めての出産を前に不妊に対する意識が高まっているとも考えられますが、
不妊の原因は必ずしも加齢ではありません。
仕事のなどのストレスが生殖機能に影響を与えている可能性もあります。
また、残念ながら日本の不妊症の調査では、「妻」の年齢しか公開されていません。
もちろん、男性の生殖能力も加齢によって低下しますし、
男性側に不妊の原因がある場合もあります。
1998年のWHO(世界保健機関)の発表によれば不妊の原因が男性のみにある場合は24%で、
女性のみにある場合は41%。女性だけの問題ではないのです。
日本では不妊治療は公的保険の対象外。
一方、スペインでは不妊治療は国の保険の対象内で、
男女そろって43歳まで検査や治療を受けることができますし、
フランスでも女性が42歳になるまで自己負担なしで体外受精を受けられます。
日本にも各自治体が費用の何割かを助成してくれる制度はあるものの、
回数や所得に制限があったり、全体の費用のほんの一部にすぎなかったりと課題が残ります。
不妊治療に関する保険商品が解禁されたのは大きな一歩ですが、
日本はまだまだ不妊への理解が乏しいと言えます。