女性の不妊原因は男性よりもかなりずっと複雑なようです。
妊娠成立のプロセスからも理解できるように、男性不妊の主な原因は、
造精機能障害(正常精子を作る力が不十分なこと)です。
しかし、男性不妊の場合は人工授精や体外受精、顕微授精などの治療法があります。
一方、女性不妊の原因は排卵因子、頸管因子、子宮因子、卵管因子など、さまざま考えられます。
さらに、たとえば排卵因子ひとつを考えても、卵子を成熟させるホルモンの働きに問題があるケース、
卵巣に血液の塊ができる子宮内膜症のために排卵がうまくいかないケースなど、
いろいろな原因が考えられます。
女性の不妊原因は多種多様で、それだけ検査の種類も多くなるわけです。
なお、女性側の不妊原因のなかで一番多いのは卵管因子で、
何らかの原因で卵管が狭くなる、閉鎖する、卵管の運動性が低くなるなど、
卵管の通過障害が起こるケースです。
また、子宮内膜症が不妊症の原因の場合も多く、体外受精も治療法の選択肢のひとつに入ります。
子宮内膜は本来なら子宮の内側にだけあるのですが、
それ以外のさまざまなところに発生してしまうのが、子宮内膜症です。
卵巣や卵管、子宮と直腸の間、子宮筋層などに発生し、卵巣内にできた場合をチョコレート嚢胞、
子宮筋層に発生した場合を子宮腺筋症といいます。
子宮内膜はホルモンの影響で、月経のたびに出血します。
さまざまなところに飛び火した子宮内膜も月経のたびに出血を繰り返し、
月経痛や性交痛が起こってきます。
また、不妊症の原因となる場合があります。 子宮内膜症は30代に多いのですが、
なかには20代、10代で発症することもあります。
特徴的な症状は月経痛が強いこと!なので、
月経痛がひどいときは早めに検査を受けるといいでしょう。
さらにクラミジア感染症は卵管性不妊の重大な原因となっています。
女性の不妊原因の中で最も多い卵管因子(卵管の通過障害)の場合、
大半はSTD(性感染症)の原因菌が卵管やその周辺に感染するのが原因といわれています。
クラミジア感染症の場合、男性では排尿痛などの症状が出て気づくことがありますが、
女性ではほぼ無症状です。感染を知らないまま治療をしないでいると、
子宮頸管→子宮腔→卵管へとクラミジア感染が広がり、卵管閉塞の原因になることがあります。
クラミジア感染症による卵管閉塞の場合、体外受精が第一選択肢となります。
クラミジア感染症は男性よりも女性のほうに、より多くのダメージを与えるわけです。
血液検査でホルモンの分泌量を調べる、超音波検査で卵巣や子宮の中を観察するなど、
不妊の原因をさぐる検査方法にはいろいろあります。
しかし、これらの検査ではっきりした原因がわからない場合を、
ただし、原因不明不妊は原因がないということではありません。
現時点でできる検査では原因が突き止められないという意味です。
しかし、最近まで原因不明とされてきたなかには、
卵管采が卵子をピックアップできないピックアップ障害や、受精卵の透明帯が硬く、
子宮内膜に着床しにくいケースがあるとわかってきました。
卵管采のピックアップ障害は、体外受精で妊娠が可能です。
透明帯が原因の着床不全では体外受精・顕微授精による受精卵を子宮内に戻す前に、
あらかじめ透明帯を薄く削るアシステッド・ハッチング(孵化補助)が有効です。
このように、原因不明不妊の「原因」が解明されるにしたがい、適切な治療法を選択して赤ちゃんを授かるご夫婦も増えています。