過熱するDIYバイオ 危うさはないのか?
過熱するDIYバイオ。アメリカの医学会は、人体の遺伝子改変など、行き過ぎた実験には懸念を示しています。
米国遺伝子細胞治療学会 ヘレン・ヘスロプ会長
「専門的な裏付けのないまま、個人がやみくもに実験を行うことはリスクを伴います。
予想できない副作用を引き起こす可能性があるからです。」
あなたが“発明”の主役!? 身近になるバイオ技術
ゲスト 岩崎秀雄さん(早稲田大学教授)
武田:DIYバイオに詳しい岩崎さん。
ここまで草の根に広がっているのは驚きだったんですけれども、なぜこういうことになっているんでしょう?
岩崎さん:いくつか理由があるんですけども、1つは、
VTRの中にもありましたように、生命の情報である遺伝子の情報というのを、
解読技術が非常に発達して、
それから非常に安く大量のデータが取れるようになったということと、
それからそれを改変しようとする時に必要なDNAを合成する技術が、
すごく、これもまた安くなったということがあると思います。
それからあとはインターネットのことなんですけれども、
インターネットの発達によって、
大学とかにいなくても自分で学習ができる環境ができたり、
それをシェアしたり、あるいは自分たちで作ったものを仲間で共有するとか、
そういったことができるようになったというのが、
かなり大きなポイントかなと思います。
武田:普通の人たちが趣味でやっているということも、
ちょっとびっくりしたんですけれども、
人体実験までやっている人は大丈夫なんでしょうか?
これは、どう捉えたらいいんでしょうか?
岩崎さん:あれは、かなりグレーゾーンで、本当にリスキーなこともありますので、
あまりまねしない方がいいと思いますし、
安易に人に勧めるべきものではないと思います。
ただ一方で、彼らが目指しているビジョンの1つというのは、
新たに僕たちが捉え直して、
それでどういう未来を作っていくかということの1つのビジョンであるということですね。
それの表明として、いろんなものが作られたり、
一種のデモンストレーションとして、
こういうものが出てきているという側面はあると思います。
武田:どういう未来をつくるのかということを、こういう活動を通して表現している、一種の表現活動?
岩崎さん:実際にアーティストやデザイナーも、こういう動きに多く関与したりとかしています。
田中:このDIYバイオですけれども、代表的なものとしては、
遺伝子を改変するものと、細胞を培養するものがあります。
VTRで詳しく見てきたもの以外でも、例えば遺伝子改変では、
光るビールや植物を作っている人もいます。
これはクラゲやホタルの遺伝子を組み込んだものです。
さらにアメリカには、
犬の遺伝病を遺伝子改変で治療できないかと取り組む愛犬家もいます。
もう1つの細胞培養では、バクテリアを利用した薄いシートも作られています。
石油を原料とするものに代わる環境に優しい新素材として、注目を集めています。
武田:バイオの研究といいますと、企業や研究機関がやるものだと思っていたんですけれども、組織にとらわれない個人だからこそ出てくる発想って、やっぱりあるんですか?
岩崎さん:あると思います。例えば企業だと、
やはりプロダクトとして売れるものを作らなければいけないし、
大学だと論文を書かなければいけないと、
そういったいろんな制約があると思いますので、そこを打ち破って、
自由な発想でやることで何か新しいものが生まれたりとか、
もしくは自分にとって有益なものを作るという回路が
開かれるというのがあると思います。