イギリスでは2005年以降、「心臓病の治療が認知症予防」というスローガンを掲げ、
国を挙げて認知症予防につながる生活習慣病予防を国民に呼びかけてきました。
その柱となったのが、「禁煙」と「減塩」の推進です。
この取り組みが功を奏したこともあって、2013年にLancet誌が発表した内容によれば、
イギリスにおける認知症の有症率は減少しました。
1989年~1994年の間では8.3%だったのに対し、
2008年~2011年の間では6.5%になっていたのです。
世界中の研究者が注目しています。
「酒は百薬の長」といいますが、こと認知症に限ってはどうもそうではありません。
これまでは、1合程度のお酒はむしろ認知症予防に良いとされてきましたが、
「少量のお酒でも脳を萎縮させる」ということが、
アメリカ・ウェルズリー大学の研究チームによって示されているのです。
その研究結果によると、
生涯にわたってお酒を飲まなかった人の脳の萎縮が最も小さく、
逆に大量に飲酒してきた人の脳の萎縮が最も大きかったのです。
ただ、脳の萎縮=認知症ではありませんが、
認知症予防という観点からすれば、やはり飲酒は度を越してはいけないのです。
現時点では、認知症を確実に予防する方法はありませんが、
糖尿病や高脂血症などの生活習慣病と、認知症との関連性を示す研究は多くあります。
そのためにも適度な運動を生活の中に取り入れることに加え、
少食ファスティングで正しい食生活を回復することが認知症の予防にもつながると
甲田光雄先生は明確に断言しておられます。
定年退職後にやることがないといって、家の中で退屈な日々を過ごし、
酒を毎日、たとえ少量でも飲んでいたとか、
家族以外の人とコミュニケーションを取る機会が減り、
脳への刺激も少なくなって痴呆症の大きな原因となるのです。
2011年にアメリカのタイム誌で報告された研究によれば、
友人が多いなど社会的なつながりのある人は、
認知症の発症リスクが70%も減少するといいます。
それゆえにボランティア活動などの社会活動に積極的に参加し、
社会の中で役割や生きがいを持つと、心と脳が活性化することになり、
認知症予防にもつながることは、多くの研究で明らかになっています。