中高年男性の自殺の原因・生命保険の普及がったとする証拠は、1999年です。
この年は3万1413人の自殺者に対して
12万270件という4倍にせまる保険金が自殺に対して払われているのです。
それは単純にいえば、自殺者の多くが生命保険に、
それも複数加入していたことを意味しているのです。
それは20世紀末に地方を中心として自殺が増加したのと比例しています。
土地の信用力の弱い地方の経営者は、融資の担保として、
複数の生命保険に加入することをなかば強制されていた可能性が高いのです。
そしてバブルの崩壊で落差が多く影響したのは地方の中小企業でした。
多くの経営者が自殺を選択し、借金を精算することに追い込まれていったのです。
ただ誤解ないように経営者の自殺者は、
単純に保険金の支払いを目的だったというわけではありません。
警察庁の統計では2007年以降、保険金を目的としたとみられる自殺数を公表していますが、
同年、男性で139件、女性で12件と全体の0.5%しか
保険金を目的とした自殺は確認されていません。
では生命保険と自殺のかかわりはないのかといいますと
問題はさらに深刻で自殺者に保険金の支払いという目的を隠すことが
陰日向に求められるという社会的な仕組みがあることです。
通常、契約後の免責期間(近年では3年)内に行われた自殺は、
保険金を目的とした「不誠実」なものとして、保険会社はその支払いを拒否できます。
そのために自殺を引き伸ばすか、たとえばそれを事故に紛らわせることに誘導されるか、
偽装の必要のない免責期間直後に自殺が急増するというデータがあるのです。
また、免責期間の後も、保険金受取という目的を公言できはずはありません。
保険金目的が露骨な自殺に対する支払いについては、
保険会社が裁判になりますし、さらに世間がそれを許さないからです。
自殺の意図を曖昧とする暗黙の習慣を土台として、
自殺と生命保険のつながりが社会的にむしろ活用されてきたことが問題です。
まさかのときには、みずから死を選ぶことで住宅ローンや、
会社への融資が返されることは、たしかに公言されません。
こと生命保険にかかわる自殺では、意図を公言しないことがこうしてシステム的に求められています。
ゆえにこうして生命保険を媒介にして、自殺を多額の金で償う社会的に黙認されたシステムが、
経済的な不況を反映して、中高年男性を中心に自殺を頻発させる社会をつくりだしてきたのです。
私は高度成長期やバブル時代に保険代理店を営んでいた時代は、
経営者の自殺は皆無でしたが、バブル崩壊後は、確かに急増した記憶があります。