ドーパミンによる快楽刺激が少ないために、常に空腹感(飢餓感)を感じやすくなり、
ドーパミン受容体が少なかったり感度が悪いために、
いくら食べても満腹したという満足感を感じにくくなっている。
摂食障害には『各種の人間関係にまつわる精神的ストレス』や
『痩せた美しい身体になりたいという痩せ願望・肥満恐怖』といった心理的要因も深く関係しており、
精神分析的な発達史研究では特に、
『発達早期の母子関係における愛情不足(愛情飢餓)や分離不安(孤独の恐怖)』が
摂食障害の発症・維持に関わっていると考えられている。
摂食障害は『広義の精神的ストレス』によって、
食欲を調節する生理学的システムやホルモンバランスに異常が起こることで発症する
精神疾患である。
母子関係の愛情剥奪やスタイルに関するコンプレックス(妄想的な思い込みも含む)、
肥満による悪口・いじめといった『発達過程の印象的なエピソード』が食行動にまつわる
強迫観念を生み出しているケースも多い。
その場合には『過食・拒食の行動』に誰かに何かを訴えたいメッセージ性が込められていることもあり、
そのメッセージの内容や目的、意義を解きほぐしていくことがカウンセリング効果につながる。
現在の人間関係のやり取りや過去の重要な相手との人間関係のトラウマが関係している時には、
『対人関係にまつわるストレス耐性の低さ(他人からの批判・否定に耐えられない)』や
『自己主張・感情表現が上手くできない
コミュニケーション不全(自分の言いたいことや気持ちを我慢して溜め込む)』、
『新たな人間関係や生活環境に対する適応能力の低さ
(今までと違う相手の反応や環境条件に混乱してしまう)』といったものが、
摂食障害をはじめとする依存症のトリガー(心理的要因の引き金)になってしまうことがある。
人間を含む哺乳類一般では、
精神的ストレスが『食欲の過剰(ストレス解消としての食行動)』を
引き起こしやすいことが実験で確認されており、
特に精神的ストレスが強い時には『糖分(炭水化物)・脂肪を多く含む食事』を
大量に取りやすくなること(その結果として肥満になりやすくなること)が分かっている。
ストレス性の過食行動が見られる時には、
間脳の視床下部から満腹ホルモン(CRH)が分泌され、
CRHを受容した脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモンが分泌されている。
その副腎皮質刺激ホルモンによって副腎から『コルチゾール(コルチコステロン)』という
ストレスホルモンが更に分泌されることで、
コルチゾールのストレス反応を受けた脳の報酬系のドーパミン濃度が低下し、
『通常の食事量』ではなかなか満足感(満腹感)を感じられなくなって過食に陥ってしまうのである。