2002年11月21日、カナダ大使館大使とスカッシュの練習中に倒れられた高円宮殿下が
突然、死亡されたのですが、その原因が、心室細動でした。
人が倒れて意識を失った場合、
心臓を動かしている電気系統
(心臓の筋肉の一部から発信された微量の電気が伝わるしくみ)が
何らかの原因で混乱すると、リズミカルな収縮が行えなくなります(不整脈)。
その不整脈の中でも、とくに心臓の血液を全身に送り出す場所(心室)が
ブルブル震えて(細動)、血液を送り出せなくなった状態(心停止状態)を
「心室細動」とよびます。
この心室細動が起こると、脳や腎臓、肝臓など重要な臓器にも血液が行かなくなり、
やがて心臓が完全に停止して死亡してしまう、とても危険な状態です。
心臓が原因の突然死の多くは、この心室細動を起こしています。
心室から発生する頻脈には、心室頻拍と心室細動の2つがあります。
心室頻拍は、脈が突然1分間に180など急激に速くなっているものの、
心電図の波形が一定のものです。
これに対し、心室細動は脈のかたちが一定ではなく不規則で、
心室がけいれんを起こし1分間の脈拍数が300など数えられないくらい
速くなった状態です。
心室頻拍は血圧が保たれ、すぐには意識を失わないこともありますが、
心室細動になると、発症から5~10秒で意識がなくなって失神し、
その状態が続くとそのまま亡くなってしまいます。
意識がなくなって突然死を起こすことがあります。
こういった不整脈が突然死につながるのは、
特に多いのが、心臓に血液を送る冠動脈がつまって
心臓の筋肉が壊死を起こす急性心筋梗塞の直後に心室細動を起こすケースです。
心筋梗塞を発症した直後、数日間から数週間は、
冠攣縮(かんれんしゅく)性狭心症では、
一時的に冠動脈が狭くなって息切れや胸痛を起こしますが、
心室細動を誘発することもあるので要注意です。
また、風船のように心臓がふくらんでくる拡張型心筋症、
おもに左心室が肥大化する肥大型心筋症も突然死につながる
不整脈を起こしやすくなります。
拡張型心筋症は、息切れといった症状が出て見つかることが多いのですが、
肥大型心筋症は自覚症状がない場合が多いので、
突然死につながるような発作を起こすまでわからないこともあります。
ブルガダ(Brugada)症候群とQT延長症候群があります。
ブルガダ症候群は、
1992年にスペイン人のブルガダ医師がはじめて報告した比較的新しい病気です。
アジア人の男性に多く、睡眠中や安静にしているときに心室細動を起こすのが特徴で、
いわゆるポックリ病(若年者の急性死)の原因といわれています。
いっぽう、QT延長症候群は女性に多く、心臓が収縮したあと、
興奮がもとに戻るのがおそいために心筋細胞が過敏になり、
心室細動を起こすことがある病気です。
ブルガダ症候群、QT延長症候群かどうかは、
一般的には心電図検査を受ければ診断できます。
どちらも特定の遺伝子に異常があることがわかっているので、
遺伝子検査をすることもあります。