サイトメガロウイルス(感染細胞が、核内封入体を持つ特徴的な巨細胞となることから
このように命名されました。
ヒトヘルペスウイルス5)は、初感染では、
一部で伝染性単核症のような病態を起こしますが、
特に免疫不全状態における間質性肺炎などの疾患に関与します。
これ以降に発見されたウイルスはいずれも番号のみです。
ヒトヘルペスウイルス6と7は、どちらも初感染が突発性発疹症の原因となります。
この疾患は、主に乳幼児期に経験します。
発熱が続いたあと、解熱とともに全身に赤い発疹が出る病気で、
普通は予後良好ですが、まれに、脳炎などが起こります。
赤ちゃんに高熱が出る代表的な病気で、両親が最初に経験することが多いので、
印象に残っている方もあるかと思います。
ヒトヘルペスウイルス8は、ほかのウイルスと異なり、遺伝子操作技術を用いて、
AIDS患者のカポジ肉腫という悪性腫瘍からDNA断片が発見されました。
従って、AIDS関連の悪性腫瘍への関与が検討されています。
異なる発症形態
簡単な紹介をさせていただきました。見た目は同じでも、個々のウイルスで、
その関連疾患が著しく異なることが分かります。
さらに、同じウイルスの感染でも不顕性感染、顕性感染、回帰感染などがあり、
複雑です。それでは、なぜこのように、発症形態が異なるのでしょうか
(水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染は除きます。
前述したように、ほぼ全例が水痘を発症します)。
その理由として、ウイルスそのものの違い
(例えば、EBウイルスは、世界中で大きく2種類が存在します)、
環境要因(例えば、飲食物や住環境を含んだ人口密度、習慣の追いなど)
などが挙げられていますが、現在最も可能性が論じられているのは、
既に触れましたように、宿主の免疫状態にあると考えられています。
免疫系の理解もなかなか難しい点がありますが、ウイルス感染では、
免疫を支えるものとして、抗体(抗原[ウイルスも含まれます]に結合して、
その働きを抑えます)とリンパ球(抗体の産生や、
ウイルス感染細胞の排除などに関連します)が大事です。
このいずれか、あるいは両方の働きが低下すると、初感染では、
病気が重症化するとともに長引いたり、また既感染では、
それまで体の中に潜んでいたウイルス
(個々のウイルスによりも潜む場所が異なります。
例えば、単純ヘルペスウイルス1型は、通常、三叉神経節です)の活性化が起こり、
それぞれに応じた回帰感染となります。
ただし、病気によっては(伝染性単核症など)、
過剰な免疫反応が本態となっている場合もあります。
なお、先進国では、一般にヘルペスウイルスの初感染の時期が遅いことが指摘され、
生活環境も影響しているものと思います。
治療予防について
治療に関しては、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルスでは
既に抗ウイルス剤が開発され、広く使用されています。
そのほかのウイルスでは、現在、その病態に応じた対処療法が主体ですが、
抗体やリンパ球を使った感染細胞そのものの排除も試みられています。
予防に関しては、免疫不全症などで未感染と思われる場合、
特異的な抗体の投与により感染を防ぐ場合があります。
また、水痘・帯状疱疹ウイルスに関しては、わが国で開発されたワクチンが、
世界中で使われています。
ヘルペスウイルス感染症は、ウイルスそのもの、環境、免疫状態などの違いにより、
無症状からがんに至るさまざまな病態に関連します。
従って、これらの背景にあることがらを理解することが大切です。