大人と子どもでは、肥満の事情も違います。
小児の肥満は脂肪細胞の数が増えていく「脂肪細胞増殖型肥満」ですが、
大人の場合は脂肪細胞自体が大きくなってしまう「脂肪細胞肥大型肥満」で、
こちらは小児の肥満より治療しやすいのです。
肥満の治療には
(1)食事療法 (2)運動療法 (3)行動療法 (4)薬物療法 (5)外科療法
などがあります。
手術によって胃を縮め、食物を入りにくくする外科療法は、高度な肥満に限られます。
薬物療法は長期の服用で肺高血圧症など肺や心臓に合併症が起こることがあり、
これも対象患者は少なく、治療の中心は食事、運動、行動療法となります。
肥満の背景には、太るのが当然の生活習慣がありますから、これを改めずに、
食事療法だけいくら続けても減量は成功しません。
運動療法を行わず、食事療法で減量しようとすると、体脂肪が減らず、
筋肉や骨の方が減ってしまうことがあります。
だから、食事、運動、行動療法は互いに極めて密接な「三位一体」の関係にあり、
どれ1つ欠けても長期的な減量効果は期待できません。
1・食事療法
減量には、入ってくるエネルギーをこれまでより減らし、
消費するエネルギーを増やすことが必要ですから、食事療法は欠かせません。
どれくらい摂取エネルギーを減らすのか。
それにはまず自分の標準体重を知っておかねば話になりません。
標準体重は<身長(m)×身長(m)×22>
の式で求めることができます。
例えば身長1m70cmのBさんの場合<1.70×1.70×22>で、
63.6kgとなります。
次に表に示した「1日の必要エネルギー量」を見てください。
Bさんが一般事務のサラリーマンだとすると、
標準体重1キログラム当たりの必要エネルギー量は表から、
25~30キロカロリーですから、
1日の必要エネルギーは<体重63.6kg×25~30kcal>で、
1590~1908kcalになり、これが食事療法の目安となります。
しかし、摂取エネルギー量を極端に制限すると、
逆効果になることがありますから
<男性では1600キロカロリー程度>
<女性では1400キロカロリー程度>
を限度にします。
1日の必要エネルギー量
日々の生活での活動強度
また注意点として、三大栄養素の割合を
まず、ご飯、パン、うどん、そばといった炭水化物の必要量を決めます。
炭水化物は脳や腎臓のエネルギー源としても重要で、制限しすぎて、
体内のグリコーゲンの貯蔵量が減ると食欲がわきますから、
1日の摂取エネルギーの60%を炭水化物から摂取するようにします。
たんぱく質は、摂取エネルギーを減らすと、その利用効率が低下しますので、
標準体重1キロあたり1.1~1.5グラムとやや多めにとるようにします。
1日のエネルギーの60%・・・炭水化物でたんぱく質は多目に脂肪は少な目に。
極端な制限は禁物ビタミン、ミネラルは十分に摂取しましょう。