「一番古いサッカリンでも135年程度の歴史しかありません。
それ以外の甘味料が登場したのは、主に2000年以降。
砂糖の数百倍も甘くて安く大量製造できるため、人体への影響が未知数のまま、
一気に広がってしまったのです」(大西さん)
例えば、アスパルテームの甘さは砂糖の160~220倍。
急激に使用が広がるスクラロースは600倍。
最も新しいネオテームは約7000~1万3000倍。
そこまで甘くする必要があるのか…と疑問を感じますが、
カロリーがないから安心して取り続けると、強い甘さに慣らされて味覚が鈍り、
果物などの自然の甘さでは物足りなくなってしまうのが、
砂糖よりも恐ろしいところです」と大西さん。
加えて、中毒性の高さも指摘しています。
神経の快楽中枢に影響し、中毒を招くことが分かってきました
。2007年にフランスで行われた、マウスを使ったサッカリンの実験では、
サッカリンはコカイン以上に中毒性が高いことが明らかになりました。
ほかの人工甘味料にも、同様の強い中毒性があると考えられます」(大西さん)
驚くべきなのは、人工甘味料も、肥満ホルモンといわれるインスリンに作用するという事実。
砂糖を避けて人工甘味料を使っても、肥満や糖尿病のリスクになるのです。
「2013年の報告で、水の後にブドウ糖液を飲んだときより、
スクラロースの後にブドウ糖液を飲んだときのほうが血糖値のピークが高くなり、
インスリン分泌が20%高くなりました。
また、2012年に米国糖尿病学会と米国心臓病協会が合同で出した声明では、
『糖類を人工甘味料に替えることが、
減量や血糖コントロールに有用とする科学的根拠は十分ではない』と述べています」(大西さん)
鬱や不眠などの精神疾患を引き起こす恐れも大きいのです。
腎機能が低下したり、脳卒中や
心筋梗塞などの血管系疾患の発症リスクが高まったりするというデータもあります。
果糖ぶどう糖液糖は、砂糖と同じものではありません。
やはり通常のコーラやスポーツ飲料を選ぼう、と思ったでしょうか。
ここでもう一つ問題があります。
清涼飲料水に含まれる「果糖ぶどう糖液糖」や「ぶとう糖果糖液糖」は、
異性化糖(高フルクトース・コーンシロップ)。
もともと日本で開発されて1970年代にアメリカに渡り、
その食生活を大幅に変えました。
トウモロコシなどのでんぷんを酵素処理して作るため安上がりで、
清涼飲料水のほかパンやしょうゆ、加工食品などに幅広く使われています。
天然甘味料に分類されるが、「天然」の2文字をうのみにしてはいけないのです。
「プリンストン大学の動物実験で、グラニュー糖を摂取したマウスより、
同量の異性化糖を摂取したマウスのほうが、顕著な体重増加が認められました。
異性化糖には多量の“果糖”が含まれていますが、
これはブドウ糖と代謝経路が異なり、取っても満腹感が得られないのです。
天然の果物と違い、清涼飲料水では一気に多量の果糖を摂取してしまうのが問題です」
(大西さん)
肥満、糖尿病の原因になるという理由で、アメリカでは、
異性化糖の使用禁止活動が広がっています。
ミッシェル・オバマ大統領夫人も2010年に、
ファストフードなどの栄養価の低い食品と一緒に、異性化糖を使った飲み物を、
学校から排除するよう呼びかけたのです。
「日本は、ほかの国より砂糖の摂取量が少ない割に、異性化糖の摂取量が多い。
しかも、全く問題視されていません。
まず控えるべきなのは、炭酸飲料などの飲み物。
購入時にラベルを確認する習慣をつけて、原料がシンプルなものを選ぶべきです」
(大西さん)
※大西睦子さん
医師。東京女子医科大学卒業。国立がんセンターなどでの臨床研究を経て、2007年ボストンのダナ・ファーバーがん研究所に留学。ハーバード大学にて食事や遺伝子と病気に関する基礎研究を進める。著書『カロリーゼロにだまされるな』(ダイヤモンド社)が話題。