しかし最近の研究では、
成人でもある程度の褐色脂肪細胞が残っていて機能していることがわかってきたのです。
がんなどの診断装置であるPETを使った研究では、
成人でも胸部や肩部などに褐色脂肪細胞の存在が確認されています。
そして、このPETを使った研究では、
被験者を低温にさらすと褐色脂肪細胞の代謝が活性化することや、
BMIや内臓脂肪量が多いほど褐色脂肪細胞の活性が低いという
実験結果も報告されています。
また痩せていて正常な血糖値をもっている成人ほど、
褐色脂肪細胞がより一般的に存在することなども他の研究結果でわかってきており、
生活習慣病の予防と褐色脂肪細胞の関連が注目されているのです。
さらに、褐色脂肪細胞の発熱能力は
通常、熱産生が行われている骨格筋の70 ~ 100倍あるといわれており、
相当のパワーを褐色脂肪細胞がもっていると考えられます。
しかし、成人の褐色脂肪細胞の数は加齢により減少していきます。
加齢による褐色脂肪細胞の消失が、
肥満を引き起こす要因になっているのではないかと考えられています。
現在では、交感神経系を刺激するとノルアドレナリンやアドレナリンなどの
神経伝達物質が出て、褐色脂肪細胞が活性化することがわかってきており、
このメカニズムに関与するであろうと考えられる食品も絞り込めてきています。
また、褐色脂肪細胞は内臓脂肪にもマーブル様に存在することがわかってきており、
特に内臓脂肪での活性化が生活習慣病予防のカギになると考えています。
近年、褐色脂肪細胞、白色脂肪細胞などに働きかけて、
肥満による疾患を予防しようとする研究が食品でも薬品レベルでも、
盛んに行われています。
食品では、白色脂肪細胞やその脂肪組織に影響を与える成分がいくつか見つかっています。
例えば、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンは、
肥満状態の脂肪組織での炎症を抑制し、糖尿病や動脈硬化など肥満に関連した
病態を改善するのに有効だということがわかっています。
いずれにせよ、脂肪は単にダイエットの敵ばかりではなく、
脂肪はエネルギーの貯蔵庫であり、体温を維持する働きをします。
また内臓の位置も保つものです。
またクッションの代わりになって外部からの刺激から守るものです。
またホルモンや胆汁などの原料となるのです。
また各種ビタミンの吸収も助けます。
ただ脂肪は先に述べたように必要以上に増加し、体重が増えますと、
見た目が変化するだけではなく、足腰に負担がかかり様々なダメージを与えます。
また、脂肪が増加すれば、気道が圧迫されれば、
睡眠時無呼吸症候群になる可能性も高くなります。
そして血液、リンパの流れも悪くなり、
それを圧迫すると心臓にも大きな負担がかかり、
高血圧、心不全、むくみの原因となるのです。
脂肪細胞は様々なホルモンを分泌し、体を調整します。
その役割は
1・女性ホルモンのエストロゲン
2・食欲を抑え、エネルギー消費を増大するレプチン
3・傷ついた血管を修復し、糖や脂肪を燃焼したり、腫瘍の増殖を抑えるアディポネクチンです。