「新型コロナ、日本で重症化率・死亡率が低いワケ」東洋経済 03(記事は2020.07.17付です)
――第2波が来たら日本は脆弱だという見方も根強くあります。
抗体検査を行ったところ、ロンドンで16.7%、ニューヨークは12.3%、東京が0.1%だった。
これをインフルエンザと同じような感染症モデルで考えると、
東京では感染防止は完璧だったが、抗体を持つ人が少ないので、
次に防御に失敗したら多くの死者が出る、という解釈になる。
このような解釈には、強い疑義を持つ必要がある。
日本は強力なロックダウンを実施しておらず、
新型コロナに暴露した人が欧米より極端に少ないとは考えにくい。
むしろ先に述べた「これまで多くの人が新型コロナにすでに感染しているが、
自然免疫でほとんどの人が治っている」という仮説に立って、
抗体ができる前に治っているので、抗体陽性者が少ないと考えるほうが自然であろう。
この仮説を用いれば、無症状のPCR陽性者が数多く発生している現状の説明もできる。
第2波が来ても、自然免疫の強さは日本人にとって強い助けとなり、
再び欧米より被害が軽くなるという考え方が成り立つ。
――「感染7段階モデル」により新型コロナの感染や症状に関わる要因を数値化してみたということですね。
新型コロナの患者数を予測するために使えるデータが現状では非常に限られる。
かかった人の重症化率や死亡率という最も基本的なデータすらない。
新型コロナの全体像を把握するためには、
全国の暴露者数を推計することが大切なので、
①全国民1億2644万人、②年代別患者数の実数値、③抗体陽性率推計値(東京大学の推計と神戸市民病院の推計)を使って、
パラメータである暴露率(新型コロナが体内に入る率)をいくつか設定し、動かしながら、
実際の重症者や死亡者のデータに当てはまりのよいものを探るシミュレーションを行った。
シミュレーションの結果の概略はこうだ。
まず、国民の少なくとも3割程度がすでに新型コロナの暴露を経験したとみられる。
暴露率はいろいろやってみたが、30~45%が妥当だろう。
そして、暴露した人の98%がステージ1かステージ2、
すなわち無症状か風邪の症状で済む。すなわち自然免疫までで終了する。
獲得免疫が出動(抗体が陽性になる)するステージ3、
ステージ4に至る人は暴露者の2%程度で、
そのうち、サイトカイン・ストームが発生して重症化するステージ5に進む人は、
20代では暴露した人10万人中5人、30~59歳では同1万人中3人、
60~69歳では同1000人中1.5人、70歳以上では同1000人中3人程度ということになった。