ACE2の発現量は、年齢、性別、ライフスタイルによって変わるという。
細胞表面にあるACE2受容体は年齢とともに増加し、
一般的に女性よりも男性のほうがその密度が高い傾向があると報告されている。
「これは単なる傾向にすぎませんが、
新型コロナウイルスの感染者が女性より男性に多い理由を説明することができます」と、
ドイツのハイデルベルクにある胸部クリニックのローランド・アイルズ教授は指摘する。
また、ACE2の発現量は、運動や喫煙によっても上昇することがわかっている。
心疾患、高血圧、慢性閉塞性肺疾患などの持病もちの人々も、
肺のACE2発現量が上昇するという。
2)体のどの組織に感染するのか?
疑問となるのは、これらがわれわれの体の「どこ」で発現しているかだろう。
結論から言うと、新型コロナウイルスは、
基本的にACE2とTMPRSS2
(またはFURIN)の両方が発現している組織の上皮細胞に感染する傾向にある。
COVID-19の患者の多くに症状が現れる気管支や肺は、
これら2つの受容体が発現している組織の主な例である。
ACE2とTMPRSS2の遺伝子発現は、組織細胞の種類によって異なっており、
それには個人差や性差もある。
ACE2の発現は、肺、心臓、小腸、腎臓、精巣、肝臓の、
特に組織表面で上皮を形成する上皮細胞で報告されている。
また「GTEx(Genotype-Tissue Expression)」と呼ばれる
遺伝子発現の組織的差異が記録されたデータセットによると、
呼吸器系(肺)、消化器系(結腸、小腸など)、循環器系(心臓、動脈など)、
泌尿器系(腎臓)、生殖器系(精巣、卵巣)を含む複数の組織にわたって、
ACE2が中程度のレヴェルで広く発現していることがわかっている。
TMPRSS2も肺、腎臓、小腸、精巣などの組織で幅広く発現している。
3)ほかにどんな症状が現れる?
・腸:下痢や嘔吐など(軽症)
ACE2とTMPRSS2の小腸での高い遺伝子発現量から、
COVID-19は消化器系(下痢など)の症状を促すことが示唆されている。
実際に武漢で実施された調査によると、
比較的軽症で済んだ患者の多くが最初に感じた症状として「下痢」を挙げている。
206人の軽症患者のうち、19.4パーセントは下痢が最初の症状で、
全体の57パーセントに消化器系の症状があった。
それらは平均して5.4日続いたという。
また別の調査によると、新型コロナウイルス感染症の患者204人のうち、
腹痛、下痢、嘔吐など、18.6パーセントの患者が消化器官に関する症状を経験していた。
消化器症状のあった患者では、症状のない患者に比べて肝酵素値が高く、
単球数が少なく、プロトロンビン時間(血液の凝固異常)が
長かったことが報告されている。
・鼻:嗅覚・味覚異常(軽症)
新型コロナウイルス感染症の初期症状、特に40歳以下の人々には嗅覚異常と
味覚異常が報告されている。
韓国では30パーセント、
ドイツでは67パーセント(3人中2人)というかなりの割合のCOVID-19患者が、嗅覚・味覚障害を報告している。