東京都立衛生研究所では、TBZも危険性が高いと判断し、
マウスに対して体重1kg当たり0.7~2.4gを毎日経口投与するという実験を行いました。
その結果、おなかの中の子どもに外表奇形と骨格異常(口蓋裂、脊椎癒着)が認められました。
つまり、TBZには催奇形性があることがわかったのです。
しかし、厚生省はこの実験結果も受け入れませんでした。
そのため、TBZは今でもOPPと同様に使用が認められているのです。
さらに1992年にはイマザリルが防カビ剤として認可されましたが、
その経緯は信じられないようなものでした。
この当時、アメリカから輸入されたレモンについて、
ある市民グループが独自に検査を行ったところ、農薬が検出されました。
それが、イマザリルだったのです。
レモンが腐ったり、カビが生えないようにする目的でポストハーベスト
(収穫後の農薬使用)として使われていたのです。
これも法律に違反していました。その際、厚生省は、
なんとすぐさまイマザリルを食品添加物として認可してしまったのです。
そのため、輸入柑橘類にイマザリルが残留していても、
法律違反にはならないことになりました。
こうしてイマザリルを使用した柑橘類が堂々と輸入されるようになったのです。
なお、イマザリルは動物実験の結果から、神経行動毒性を持ち、
繁殖・行動発達を抑制することがわかっています。
農薬を次々に防カビ剤として認可厚生労働省は、
その後も次々に農薬として使われていた化学合成物質を
防カビ剤として認可しています。
まず2011年にフルジオキソニルが認可されました。
糸状菌に対して制菌作用があるため、防カビ剤としても使用が認められたのです。
しかし、マウスに対して
フルジオキソニルを0.3%含むえさを18カ月間食べさせた実験では、
高い頻度で痙攣が発生し、リンパ腫の発生率が増加しました。
さらに2013年にはピリメタニルが認可されましたが、
ラットに対してピリメタニルを0.5%含むえさを2年間食べさせたところ、
甲状腺に腫瘍の発生が認められました。
つまり、発がん性の疑いがあるということです。
また同じ年にアゾキシストロビンが認可されましたが、
ラット64匹にアゾキシストロビンを0.15%含むえさを2年間食べさせたところ、
13匹が途中で死亡し、胆管炎や胆管壁肥厚、胆管上皮過形成などが認められました。
ちなみに過形成とは、組織の構成成分の数が異常に増えることで、
腫瘍性と非腫瘍性があります。
また、今年になってプロピコナゾールが認可されました。
これも、もともとは農薬です。
マウス50匹に対して、プロピコナゾールを0.085%含むえさを
18カ月間食べさせたところ、12匹に肝細胞腫瘍が認められました。
つまり、発がん性の疑いがあるということです。
東京都健康安全研究センターでは、毎年市販されているオレンジ、
レモン、グレープフルーツ、ライムなどについて、
防カビ剤の検査を行っていますが、
果実全体からはOPP、TBZ、イマザリル、ピリメタニル、アゾキシストロビン、
フルジオキソニルなどがppmレベルで検出されています。
また、それらの防カビ剤は一部の果肉からも検出されています。
通常、オレンジやレモンは透明の袋に入っていることが多く、
防カビ剤が使われている場合、袋やそれに貼られたシールにTBZや
イマザリルなどの具体名(物質名)が表示されています。
グレープフルーツなど、ばら売りされているものについては、
プレートを設置したり、ポップを立てたりして、
それらに使われている防カビ剤の具体名が表示されています。
防カビ剤が使用された柑橘類は、できれば買わないほうがよいでしょう。
なお、国産のオレンジやレモンには、通常、防カビ剤は使われていません。
輸送にそれほど期間がかからないため、使う必要がないからです。