そして驚くべきことに日本の味の素が、
アスパルテームの大量生産技術が発明されます。
アスパルテームの量産化技術が、味の素社の社員(当時)によって発明され、
一般消費者向けに初めてパルスイートが出荷されたのは1984年です。
糖尿病等の生活習慣病への意識が高まったことやダイエットブーム、
食事コントロールの必要性への意識が高まっている背景があって急拡大していきます。
1965年に米・サール薬品がアスパルテームを偶然発見してはいたものの、
大量生産は困難であるとされていた中で、味の素社はこの量産化技術を発明し、
アスパルテームを含む、カロリーゼロの人工甘味料パルスイートを商品化したのです。
この発明者は、味の素株式会社の元従業員である成瀬昌芳(注・01)です。
アスパルテームは先日、書きましたように
1965年に米国サール社の研究者により発見され、
1983年には米国FDAで認可され、食品に使用できるようになっていたのですが、
工業的に大量生産する方法が確立されておらず、
普及させることはできていなかったのです。
味の素社はこの製造方法の研究に取り組み、確立していきます。
この発明がもとになり、国内外で複数の特許が成立し、
ライセンス収入等により10年で約80億の利益を得て、
現在に至るまで世界シェア40パーセントを占めるなど
大きな事業として展開しているのです。
1960年代頃から、人工甘味料は急速に普及し、アスパルテーム以外に、
サッカリン、アセスルファムカリウム、スクラロースなどが代表的ですが、
商品化された人工甘味料は、従来から、その安全性と、
不自然な甘みであること等を指摘され、
アスパルテームは砂糖に近い自然な甘みを持ち、
各安全性試験による審査も行われ、
安全であることが確立しているとされていますが、
やはりスキャンダラスなのです。
さてアスパルテームじゃ世界100か国以上であらゆる食品に使用されています。
その数は6000種類以上ということです。
砂糖の160倍~220倍なので、ごく少量でも甘味を感じます。
そしてカロリーはなく、ダイエットには最適とされてきました。
ゆえにダイエットソーダ(飲料)にかなり使用されています。
世界市場では、毎年、5%の成長率でアジア、南米では
毎年、10%という驚異的な成長です。
その背景には砂糖の価格が上昇していることと折からのダイエットブームです。
日本ではチューインガム、ダイエット飲料、お菓子の大半、ヨーグルト、
歯磨きなど数多く使用されています。
とくに他の人工甘味料と組み合わせたカクテルが主流です。
その理由は、甘味改善です。
その順番は
1・スクラロース
2・アセルスファムカリウム
3・アスパルテーム
4・サッカリン
でそれで自然の甘さが出ると言われています。
成瀬昌芳(注・01)
清涼飲料水などに広く使われる人工甘味料「アスパルテーム」の製造法を開発した「味の素」(東京)の元中央研究所プロセス開発研究所長、成瀬昌芳さん(63)が、会社に特許権を譲渡した対価の一部の支払いを求めた訴訟は19日、味の素が和解金1億5000万円を支払うことなどを条件に、東京高裁(北山元章裁判長)で和解が成立した。成瀬さんは1982年、良質なアスパルテームの効率的な製造法を同僚と開発。味の素は2001年までに成瀬さんらに報償金計1200万円を支給し、成瀬さんがうち1000万円を受け取った。
(日経)