玄米には農薬の心配もありますが、それを撃退するフィチン酸があります。
そのフィチン酸とはいかなるものなのでしょうか。
1・フィチン酸の基本情報
フィチン酸は、イノシトールにリン酸が結合することによってできる、
リン酸化合物の一種でビタミンBの仲間です。
米ぬか、とうもろこしなどから水または酸性水溶液で抽出して得られます。
淡黄~淡褐色のシロップ状の液体で、酸味があり熱や酸に弱い性質があります。
米ぬかや小麦などの穀類、豆類などに多く含まれています。
穀類など植物の種子ではふすまと呼ばれる外被に多く含まれていますが、
通常の精米やふすまを取り除く処理によって
フィチン酸の多くの部分が失われてしまいます。
また、ミネラルと強く結合し、複合体を形成する性質があります。
結合しやすいといわれています。
フィチン酸は食材に含まれるだけでなく、
人間の細胞を含め、あらゆる動物の細胞内にも存在しています。
人間では心筋や脳、骨格筋などに多く含まれており、
細胞機能を制御する役割を担っています。
2・フィチン酸の歴史
フィチン酸は近年研究が進み注目が集まっている成分です。
もともとフィチン酸は1958年に人間の腎結石の予防や治療のために
臨床で用いられていました。
ボストンのハーバード大学医学部と、
マサチューセッツ総合病院のフィリップ・ヘンネマン博士とその共同研究者は、
腎結石を合併症として高頻度に発病する
突発性高カルシウム尿症のフィチン酸での治療に成功しています。
1985年にはエルンスト・グラーフ博士と助手である
ジョン・イートンが専門雑誌「Cancer」の論説で、
食物繊維とフィチン酸では、どちらが健康に有益かという設問を挙げています。
同年、米国メリーランド大学医学部のアブルカラム・M・シャムスディン博士により、
世界に先駆けてイノシトールとフィチン酸の抗ガン作用に関する実験が行われました。
シャムスディン博士はフィチン酸研究の第一人者として世界的に有名で、
日本でも著書が邦訳され、関心を集めました。
さらに、1998年6月に京都市で国際シンポジウムが開催され、
フィチン酸は抗ガン作用がある成分として注目を集めました。
3・フィチン酸の働き
フィチン酸はエネルギーの原料であるリンの供給源であることが知られています。
リンはあらゆる細胞でエネルギー源となるATPの構成成分となる栄養素です。
フィチン酸はそのリンの主な蓄臓形態であり、
重要なリンの供給源という役割を持っています。