フィチン酸には非常に強い抗酸化作用(注・01)があります。
人間が体内でエネルギーをつくるときに副産物として
活性酸素(注・02)が発生します。
フィチン酸は、活性酸素の生成を抑えるという特徴を持っています。
細胞分裂はすべての生物が成長し、子孫を残す上で基本となるもので
生物は常に細胞分裂を続けています。
コントロールの効かない細胞分裂は様々な病気の先駆けとなってしまいます。
フィチン酸はDNA合成を調整し、細胞分裂を調整していると考えられています。
<豆知識>フィチン酸の摂取とガンの発生
フィンランド人の食事習慣は穀物が中心でフィチン酸を多く摂取しています。一方、デンマーク人はじゃがいもや黒パンを中心とした生活をしており、食物繊維の総摂取量はフィンランド人の約2倍ですが、食事中のフィチン酸の摂取量は少なくなっています。ある調査によると、フィンランド人の大腸ガンの発生率はデンマーク人の約半分という結果が出ています。フィンランド人の食事はフィチン酸が多く、デンマーク人の食事はフィチン酸が少ないということから大腸ガンの発生率とフィチン酸の摂取の間に関連があると考えられています。
4・フィチン酸の効果
・血栓症を予防する効果
血液をつくる成分の一種である血小板が凝集すると血栓が形成され、
動脈硬化や心筋梗塞などの心臓血管系の疾患を引き起こす可能性があります。
フィチン酸は血小板の凝集を抑制する働きがあり、
その結果、血液凝固を予防する効果が期待できます。
イワナ・ブセニック博士とジョン・ポドクザシー博士の研究では、
人間の血小板凝集機能を測定しました。
この研究では、フィチン酸を多く加えれば加えるほど、
血液凝固がより強く抑制されたという結果が出ています。
この強い血小板の凝集抑制効果を臨床に応用し、
冠動脈心疾患・血栓症・塞栓症などのリスクを
低下させることができるのではないかと期待されています。
・高カルシウム尿症を予防する効果
尿中のカルシウム値が高い状態になると体内に腎結石ができる可能性が増大します。
腎結石の原因は結晶性物質の過剰な蓄積といわれており、
その80%~90%はシュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムからなっています。
フィチン酸はカルシウム結晶の生成を阻止し、
尿中のカルシウムレベルを低下させる効果があります。
また、フィチン酸を高濃度に含む米ぬかも
高カルシウム尿症と腎結石の治療に用いられています。
1958年に行われた研究では、
患者1人当たり1日に総量8.8gのフィチン酸ナトリウムを数回に分けて投与しました。
その結果、患者の尿中カルシウムレベルを正常に戻すことに成功しました。
また、この治療を長期(平均24ヵ月)にわたって行ったところ、
10人中9人の患者に高カルシウム尿症の改善が認められました。
さらに8人の患者に新しい腎結石の形成が起こらないという結果も出ています。
また同様に、カルシウム結石の予防にも役立つと考えられています。
抗酸化作用(注・01)
[※1:抗酸化作用とは、体内で発生した活性酸素を抑制する力のことです。]
活性酸素(注・02)
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、
著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。
ストレス、紫外線、喫煙などの要因によって体内で過剰に発生した場合、
脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。