18世紀の産業革命(注・01)以後、地球と人間社会に与えた影響は計り知れません。
特に何億年もの間に蓄積された化石燃料を使い続け、
膨大な二酸化炭素を排出し、その結果、最も大きな問題が地球温暖化です。
現在、地球の平均気温は14℃前後ですが、もし大気中に水蒸気、二酸化炭素、
メタンなどの温室効果ガスがなければ、マイナス19℃くらいになります。
太陽から地球に降り注ぐ光は、地球の大気を素通りして地面を暖め、
その地表から放射される熱を温室効果ガスが吸収し大気を暖めているからです。
近年、産業活動が活発になり、二酸化炭素、メタン、
さらにはフロン類などの温室効果ガスが大量に排出されて
大気中の濃度が高まり熱の吸収が増えた結果、気温が上昇し始めています。
これが地球温暖化です。
IPCC第4次評価報告書によれば、温室効果ガス別の地球温暖化への寄与は、
二酸化炭素76.7%、メタン14.3%、一酸化二窒素7.9%、オゾン層破壊物質でもある
フロン類(CFCs、HCFCs)1.1%、となっています。
つまり、石油や石炭など化石燃料の燃焼などによって排出される
二酸化炭素が最大の温暖化の原因と言えます。
この二酸化炭素濃度は、産業革命前1750年の280ppmから2013年には400ppmを超え、
実に40%以上も増加しており、IPCCでは、大気中の二酸化炭素、
メタン、一酸化二窒素は、過去80万年間で
前例のない水準まで増加していると報告しています。
IPCC第6次評価報告書(2021)によると、世界平均気温は工業化前と比べて、
2011~2020で1.09℃上昇しています。
また、陸域では海面付近よりも1.4~1.7倍の速度で気温が上昇し、
北極圏では世界平均の約2倍の速度で気温が上昇するとしています。
特に最近30年の各10年間の世界平均気温は、
1850年以降のどの10年間よりも高温となっています。
中でも1998年は世界平均気温が最も高かった年でした。
2013年には2番目に高かった年を記録しています。
今後、温室効果ガス濃度がさらに上昇し続けると、
今後気温はさらに上昇すると予測されています。IPCC第6次評価報告書によると、
今世紀末までに3.3~5.7℃の上昇(SSPD-8.5)と予測されています。
どこまで続くのか 海面の上昇は、20世紀(1901~2010年)の間、
海面は19cm上昇しました。
今後、地球温暖化に伴う海水温の上昇による熱膨張と氷河などの融解によって、
2100年までに最大82cm上昇すると予測されています。
北極海の海氷、海の酸性化も進む
IPCC第5次評価報告書では、ほかにも北極海の海氷について、
海洋酸性化についてなど、観測された変化や将来予測などの科学的な根拠について、
最新の発表をしています。
18世紀の産業革命(注・01)
過去において、人類の文明史を画期した大きな事件は二つあった。一つは、人類が紀元前8000年ごろにメソポタミア地方で農業を始めた「農業革命」、もう一つは18世紀イギリスで開始された「産業革命」である。現在、産業革命がつくりだした物質文明は、過去における二つの大変革に匹敵するような大きな変革に直面している。アルビン・トフラーはこれを人類史における「第三の波」とよんでいるが、人によっては「第二の産業革命」とよぶこともある。18世紀イギリスに起こった産業革命は、農業文明社会から工業文明社会への移行を意味するから、普通これを「工業化」とよんでいる。工業化はその後ヨーロッパ諸国、アメリカ、日本、ロシアなどに拡大し、さらに20世紀後半には、中国、韓国、東南アジア、中近東、ラテンアメリカ、アフリカ諸国に広がりつつある。工業化を簡単に定義することは困難であるが、物質的財貨の生産に無生物的資源を広範に利用する組織的経済過程であるといってよい。すなわち農業社会では、そのエネルギーを人間や動物の筋力か、風力、水力といった自然の力に頼っていた。また生活に必要な炊事や暖房、生産のための熱エネルギーは、主として薪炭に依存していた。これに対して工業化は、こうしたエネルギーの生物的資源への依存から、石炭やガス、石油といった一度消費してしまえば再生不可能な化石燃料への依存に移ることで、その際、新しいエネルギー体系への移行とその経済過程への適用を支えたものは、科学技術の進歩であった。こうしてイギリス産業革命は、かつて経済学者のアーノルド・トインビーが主張したような激変的でドラスティックな現象としてではなく、少なくとも16世紀中ごろから工業化が始まったとする見解が今日では支配的である。
(日本大百科全書)