ヨーグルトは乳に乳酸菌や酵母を混ぜて発酵させて作る発酵食品です。
乳原料を搾乳し利用する動物は専用のウシ(乳牛)だけでなく、
水牛、山羊、羊、馬、ラクダなどの乳分泌量が比較的多く、
搾乳が行いやすい温和な草食動物が利用されます。
ヨーグルトに溜まる上澄み液は乳清(英語ではwhey〈ホエイ〉)。
ヨーグルトの起源はヨーロッパ、アジア、中近東にかけての様々な説がありますが、
約7000年前、生乳の入った容器に環境常在菌である乳酸菌が
偶然入り込んだのがはじまりといわれています。
気温の高い地方では、生乳のままだと腐りやすいが、
乳酸菌で乳を発酵させると保存性がよくなるため、
イランなどでは乳を醗酵させた後で乳脂肪分を分離し、
バターを得ることも行われていたのです。
欧米や日本において用いられる「ヨーグルト」という言葉は、
トルコ語でヨーグルトを意味する「ヨウルト(yoğurt)」に由来します。
イリヤ・メチニコフ(微生物学者:ノーベル生理学・医学賞 1908年受賞)が
ブルガリアを訪れた際に、ブルガリア人が長寿で有ることを発見し、
その原因を現地の伝統食品であるヨーグルトであるとし、
『ヨーグルト不老長寿説』を発表した事によって広まっていきます。
日本語のヨーグルトはドイツ語のJoghurtが由来です。
乳酸菌は通常、腸内細菌として棲息していますが、
ヨーグルトの乳酸菌は、腸内定着することはできません。
乳酸菌の耐酸性には差違がありヨーグルトでよく利用されている
「ブルガリア株」は胃酸で不活化(死滅)します。
また、生存し胃を通過したとしても小腸内で胆汁酸により不活化
(死滅)するため大腸内に定着はしないのです。
一方、ビフィズス菌もヨーグルトで利用されるが、
胃酸、胆汁酸で不活化(死滅)せず、
大腸内で定着する性質を有するともいわれています。
乳清由来乳酸による腸内環境が弱酸性(pH5.3から)化し、
糞便菌叢の胆汁酸(弱アルカリ:pH8.2から)に耐性がある
クロストリジウム属(Clostridium)株の生育を減少させ、
腐敗産物(アンモニア、フェノール、p-クレゾール、
インドール、スカトールなど)生成量を低減させると報告されています。
一般的にヨーグルトは、「免疫力を高める」「アレルギーが治る」などの
宣伝文句が使われていますが、ヒトを対象にした臨床試験では
支持する結果が得られていないのです。
乳中の水溶性ビタミンは乳源動物の血中濃度にほぼ依存し変化しますが、
牛乳にビタミンCがほとんど含まれていないのは、
ウシなどの動物は自らビタミンCを合成できるので摂取する必要がないからです。
乳酸菌は発酵の際にビタミンCも生成し、
発酵前の生乳等のビタミンCよりも濃度が高くなります。
このため、ヨーグルトには若干のビタミンCが含まれています。
ヨーグルトが形成される過程で、乳酸菌の働きによりラクトースの一部が
乳糖不耐症の牛乳を飲むと下痢をしてしまう人がヨーグルトと共に
牛乳を飲んだ場合、牛乳だけよりも症状が軽減されるという研究があります。
ただ最近のヨーグルトに人工甘味料を加えているものがありますので、
それは要注意です。